工芸建築

京都の旧市街に位置する本社社屋、HOSOO FLAGSHIP STOREは、独立した職人たちの卓越した工芸技術を掛け合わせ、それぞれの素材と技術の魅力を最大限に引き出した建築です。西陣織のDNAである、多様な素材を立体的に織り込み一つの美へと調和させるアプローチを建築において行なった「工芸建築」です。

織物を織るように、左官、漆喰、鍛冶、箔貼り、石貼りといった工芸技術を織り合わせた建築です。建物を囲う版築の塀には時代の異なる土を幾重にも積層させ、墨漆喰の外観には、それぞれの職人の刷毛のストロークが残っています。建設会社にまるごと施工を委託するのではなく、独自の形で個々の職人を結びつけ、協業することでつくられました。

個々の素材がその魅力や個性を発揮するこの建築のように、多様な個性が複雑に織り込まれ、調和している社会こそが理想だと、私たちは考えています。それは工業的な、均一な要素によって効率的に生産され、規格にはまらないものを排除するような社会とは異なってくるはずです。

旗艦店も兼ねたこの建築を通じて、素材の多様な個性を複雑に織り込みながら調和させていく工芸の文化を発信しています。花、香り、音などへのこだわりもまたその一端です。西陣織の1200年間の伝統に息づく工芸の思想こそ、これからの時代における人との調和、環境との調和のヒントになるものだと考えています。

Photos by Mitsumasa Fujitsuka

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HOSOO FLAGSHIP STORE

本社社屋として必要とされる用途・機能とともに、旗艦店やギャラリーを兼ね備えた工芸文化の発信拠点にふさわしい、物としてのテクスチャーを持つ建築を考えました。

京都の旧市街に位置し、伝統的な景観が期待される街区に立地しています。外観には墨漆喰や金箔、版築塀といった、京都において伝統的に使われてきた、質感を持ったマテリアルを用いることによって、歴史の継承を表現したいと考えました。金箔は変わることなく輝きを保ち続ける一方で、墨漆喰は、経年によって退色してゆく。その落差として、歳月がつくり出す表情が外壁に現れるよう試みています。

施工は、特定の建設会社に一括で委託するのではなく、個々の専門技術を持った様々な職人達を束ね、自前に施工チームを編成しました。一つひとつのもののつくり方を問い直し、異なるものづくりの回路と接続させることで、新しい制作の地平を開くことに主眼を置いています。このような設計思想は、人々の眼差しが生産の結果としての「製品」にしか注がれず、生産の過程や技術がブラックボックス化し、ものづくりの可能性が狭められてしまっている現代に対する、批評的態度でもあります。

この建築では、「西陣織」とFRPの最先端技術によって開発された、光を透過する西陣織FRPガラス「NISHIJIN reflected」をはじめ、「西陣織」から左官、鍛冶、箔貼、ウィルトンカーペット、表具、家具に至るまで、多様な工芸技術がつながり合い、一つの場において連帯しています。工芸としての建築は、「細尾」の哲学が具現化したものです。

Project Booklet

受賞歴

HOSOO RESIDENCE

「HOSOO RESIDENCE」は、2017年より完全会員制として運営する宿泊施設です。京都の旧市街である御所南エリアの、閑静な路地奥に佇んでいます。建物は、戦前から残る京町家をフルリノベーションしたもので、外観は伝統的な町家の意匠を遵守、内装は西陣織や伝統的な左官技術による土壁で現代的に仕上げられた、贅沢な工芸建築です。

古来から連なる美しい陰影の伝統を宿しながら、滞在者をやさしく包み込むような空間は、「HOSOO RESIDENCE」のためだけに作られたインテリアや、厳選されたプロダクトで彩られています。実際に滞在し体感することで、人々の手が年月をかけて培った物の質とその豊かさを感じていただけます。

HOSOO RESIDENCE

工芸社会の創造